離婚時の年金分割とは?合意分割・3号分割の違いと手続き・期限を行政書士が解説【2026年版】

離婚をするときには、財産分与や養育費だけでなく、「年金分割」についても確認しておくことが大切です。
「専業主婦なら夫の年金を半分もらえる?」
「共働きでも年金分割はできる?」
「合意分割と3号分割は何が違う?」
「離婚協議書に書いておけば手続きは完了する?」
「離婚してから何年以内に手続きすればいい?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
年金分割は、離婚時に将来受け取る年金そのものを単純に半分にする制度ではありません。
婚姻期間中の厚生年金の計算の基礎となる標準報酬の記録を分割する制度です。年金分割が行われると、分割後の記録に基づいて将来の老齢厚生年金などが計算されます。
また、2026年4月から年金分割の請求期限について重要な改正が行われています。
この記事では、離婚時の年金分割について、合意分割と3号分割の違い、対象となる年金、手続き方法、請求期限、離婚協議書との関係などを行政書士がわかりやすく解説します。
離婚時の「年金分割」とは?
年金分割とは、離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦間で分割する制度です。
ここで重要なのは、
「相手が将来受け取る年金額をそのまま半分もらえる制度ではない」
という点です。
分割するのは、婚姻期間中の厚生年金について、年金額を計算する基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の記録です。
分割後は、それぞれの厚生年金記録に基づいて将来の年金額が計算されます。
また、年金分割の効果が及ぶのは厚生年金の報酬比例部分であり、国民年金の老齢基礎年金そのものを分割する制度ではありません。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある
離婚時の年金分割には、大きく分けて、
①合意分割
②3号分割
の2種類があります。
名前が似ているため混同されやすいのですが、対象となる期間や相手方の合意が必要かどうかなどに違いがあります。
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合意分割とは?
合意分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録について、夫婦の合意または裁判手続によって按分割合を決めて分割する制度です。
合意分割を利用するためには、主に、
* 婚姻期間中に厚生年金記録があること
* 当事者の合意または裁判手続によって按分割合が定められていること
* 請求期限を経過していないこと
が必要になります。
例えば夫婦とも会社員として働いていた場合など、一方が専業主婦・専業主夫ではなかった場合でも、要件を満たせば合意分割の対象となる可能性があります。
合意分割の「按分割合」とは?
合意分割では、「按分割合」を決めます。
按分割合とは、簡単にいうと、年金分割の対象となる夫婦の厚生年金記録を、分割後にどのような割合にするかを示すものです。
ただし、
「夫の年金の50%を妻がもらう」
という意味ではありません。
婚姻期間中の夫婦双方の厚生年金記録を基礎として計算されるものです。 また、夫婦の話し合いで按分割合について合意できない場合には、当事者の一方が裁判所に申し立て、按分割合を定めてもらう方法があります。
3号分割とは?
3号分割とは、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、一定期間の相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する制度です。
例えば、会社員である夫の扶養に入り、専業主婦であった妻などが典型例です。
3号分割の対象となるのは、2008年(平成20年)4月1日以後の婚姻期間中における第3号被保険者期間です。
そして、3号分割については、
相手方の合意は必要ありません。 第3号被保険者であった方から請求することができ、対象となる厚生年金記録を2分の1ずつ分割します。
合意分割と3号分割の違い
両者の違いを整理すると、次のようになります。

※合意できない場合は、裁判手続によって按分割合を定めてもらうことができます。
専業主婦なら夫の年金を半分もらえる?
「専業主婦だったから、離婚すると夫の年金の半分を受け取れる」
という理解は正確ではありません。
3号分割で2分の1となるのは、対象となる第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)です。
夫が将来受給する年金額そのものを半分にして、その半分が妻に振り込まれるわけではありません。
分割後の厚生年金記録をもとに、それぞれの老齢厚生年金などが計算されます。
したがって、
「年金分割=相手の年金を半分受け取る制度」 と考えないことが重要です。
共働きでも年金分割できる?
夫婦双方が会社員として厚生年金に加入していた場合でも、合意分割の対象となる可能性があります。
合意分割では、婚姻期間中の夫婦双方の厚生年金記録を基礎として按分割合を考えます。
そのため、
「共働きだから年金分割は関係ない」
とは限りません。 離婚前に、自分たちの婚姻期間についてどのような厚生年金記録があるのか確認しておくとよいでしょう。
年金分割の「情報通知書」とは?
合意分割を検討する場合には、まず年金分割のための情報提供を受ける方法があります。
日本年金機構には「年金分割のための情報提供請求書」が用意されており、年金分割を行うために必要な情報を確認することができます。 離婚時に年金分割について話し合うのであれば、感覚的に割合を決めるのではなく、まず対象となる年金記録を確認したうえで検討することが重要です。
年金分割は離婚前でも準備できる?
年金分割そのものの請求は、原則として離婚後に行います。
一方、合意分割を検討するための情報提供請求は離婚前から行うことができます。
そのため、離婚協議の段階で年金分割について話し合う予定がある場合には、事前に必要な情報を確認しておく方法があります。 離婚後になって初めて年金分割について調べ始めるのではなく、財産分与や養育費などと一緒に整理しておくとよいでしょう。
2026年4月から年金分割の請求期限が「5年」に
2026年の改正で特に重要なのが、年金分割の請求期限です。
○2026年4月1日以降に離婚した場合
原則として、離婚した日の翌日から起算して5年以内です。
○2026年3月31日以前に離婚した場合
従来どおり、原則として離婚した日の翌日から起算して2年以内です。
2026年4月の改正は、民法上の財産分与請求期間が2年から5年へ変更されたことを踏まえて行われました。
したがって、
「2026年4月からすべての離婚について5年になった」わけではありません。
離婚した時期によって期限が異なるため注意が必要です。 なお、期限内に年金分割に関する調停・審判等を申し立てた場合などについては、一定の要件のもとで期限の特例があります。
離婚協議書に書けば年金分割は完了する?
離婚協議書や公正証書に年金分割について記載しただけでは、実際の年金分割手続きは完了しません。
合意分割について夫婦間で割合を決めた場合でも、実際に年金記録を分割するためには、離婚後に年金事務所または街角の年金相談センターへ「標準報酬改定請求書」を提出する必要があります。
法務省も、分割割合が決まっていても請求手続きをしなければ年金は分割されないと明確に案内しています。
つまり、
離婚協議書等で合意内容を定めること
と、
日本年金機構に年金分割を請求すること
は別の手続きです。
年金分割を離婚協議書に記載するメリット
合意分割を行う場合、離婚時に按分割合について合意できているのであれば、その内容を適切な形で残しておくことが考えられます。
離婚時には年金分割以外にも、
* 財産分与
* 養育費
* 親子交流(面会交流)
* 親権・監護に関する事項
* 慰謝料
などについて話し合うケースがあります。
それぞれについて合意した内容を書面化しておくことで、離婚後の認識の違いを防ぎやすくなります。
ただし、年金分割には日本年金機構が求める手続き・書類があります。 離婚協議書に「年金分割をする」と記載するだけで、日本年金機構への請求に必要な手続きがすべて代替されるわけではない点には注意しましょう。
年金分割と財産分与は別の制度
年金分割と財産分与は混同されることがありますが、別の制度です。
財産分与は、離婚に伴い、婚姻中に夫婦が協力して形成・維持した財産などを清算する制度です。
一方、年金分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を一定のルールに従って分割する制度です。
そのため、
「財産分与を2分の1ずつにしたから年金分割も完了した」
ということにはなりません。
離婚時には、財産分与と年金分割をそれぞれ確認しておく必要があります。
年金分割の手続きはどこでする?
年金分割の請求は、年金事務所または街角の年金相談センターで行います。
合意分割の場合、離婚後に「標準報酬改定請求書」など必要書類を提出します。
日本年金機構では、
* 年金分割のための情報提供請求書
* 標準報酬改定請求書
* 年金分割の合意書
などの様式を公開しています。 必要書類は手続きの内容によって異なるため、実際に手続きを行う際には日本年金機構の最新案内を確認することをおすすめします。
年金分割について合意できない場合は?
合意分割について夫婦間で按分割合の合意ができない場合には、家庭裁判所の手続きを利用して割合を定めてもらう方法があります。
行政書士は、夫婦間ですでに合意している内容について離婚協議書などの書面作成をサポートすることができます。
一方、
「相手が年金分割に応じない」
「按分割合について争いがある」
「相手方との交渉が必要」
といったケースについて、行政書士が一方の代理人として相手方と交渉することはできません。 当事者間で合意できない場合や家庭裁判所での手続きが必要となる場合には、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
年金分割は離婚時に忘れず確認を
離婚時の年金分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦間で分割する制度です。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」があり、対象となる期間や相手方の合意が必要かどうかなどに違いがあります。
特に注意したいポイントは、
* 年金そのものを単純に半分にする制度ではない
* 国民年金の老齢基礎年金そのものを分割する制度ではない
* 3号分割は対象期間について相手方の合意が不要
* 合意分割は夫婦の合意または裁判手続によって按分割合を決める
* 離婚協議書等に記載しただけでは年金分割は完了しない
* 2026年4月1日以降の離婚では請求期限が原則5年
という点です。
離婚する際には、養育費や財産分与などとともに年金分割についても確認し、必要な取り決めや手続きを整理しておくことが重要です。
夫婦間ですでに合意している離婚条件を書面として残す場合には、離婚協議書や公正証書の作成を検討するとよいでしょう。
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