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離婚協議書と公正証書の違い|どちらを作るべきか行政書士が解説【2026年法改正対応】

離婚する際には、養育費や財産分与、慰謝料、面会交流などについて話し合い、合意した内容を書面に残しておくことが重要です。

離婚時の取り決めを記載する書面として、主に「離婚協議書」と「離婚公正証書」があります。

しかし、
「離婚協議書と公正証書は何が違うの?」
「離婚協議書だけでは法的な効力がない?」
「養育費を取り決める場合は、公正証書にしたほうがよい?」
「2026年の法改正後は、離婚協議書だけでも差押えができる?」
「離婚協議書でも差押えができるなら、公正証書は不要?」
と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

離婚協議書と公正証書は、いずれも夫婦が合意した離婚条件を記録するための書面ですが、作成方法や証明力、支払いが滞った場合の対応などに違いがあります。

この記事では、離婚協議書と公正証書の違いや、それぞれのメリット・デメリット、どちらを選ぶべきかについて、2026年4月施行の法改正も踏まえて行政書士が解説します。

結論|将来にわたる金銭の支払いがある場合は公正証書も検討

離婚協議書と公正証書の大きな違いは、文書の作成方法や証明力、不払いが生じた場合の差押えの手続きにあります。

夫婦間で合意した内容を書面に残すことが主な目的であり、将来にわたる金銭の支払いがない場合は、離婚協議書を作成する方法も考えられます。

一方、次のような取り決めがある場合は、公正証書の作成を検討する価値があります。
・養育費を毎月支払う
・慰謝料を分割で支払う
・財産分与の支払期限が将来に設定されている
・支払いが滞った場合に備えたい
・合意内容を証明力の高い公文書として残したい
2026年4月以降は、一定の養育費について、公正証書がなくても先取特権に基づく差押えを申し立てられる場合があります。

もっとも、離婚協議書が公正証書と同じ効力を持つようになったわけではありません。
対象となる金銭や金額には一定の範囲があるため、養育費の金額や支払期間、慰謝料・財産分与の有無などを踏まえて、どちらを作成するか検討することが重要です。

離婚協議書と公正証書の違いを比較

離婚協議書は、夫婦間の合意内容を記録する「私文書」です。

一方、公正証書は、公証人が当事者の意思や合意内容を確認したうえで作成する「公文書」です。

なお、公正証書を作成しただけで、記載されたすべての取り決めについて直ちに強制執行できるわけではありません。
養育費や慰謝料、財産分与などの一定の金銭債務について、金額や支払期限などを明確に定め、「支払いを怠った場合は直ちに強制執行を受けても異議がない」という強制執行認諾条項を設ける必要があります。

離婚協議書とは

離婚協議書とは、夫婦が話し合って合意した離婚条件を書面にまとめたものです。
法律で定められた書式はなく、夫婦自身で作成することも可能です。

一般的には、次のような事項を記載します。
・離婚することへの合意
・子どもの親権者
・養育費の金額、支払日、支払期間
・面会交流の方法
・財産分与
・慰謝料
・年金分割
・住所や連絡先が変更された場合の通知
・合意内容以外に債権債務がないことを確認する清算条項
離婚協議書を作成しておけば、離婚後に「そのような約束はしていない」「合意した内容と違う」と主張された場合にも、当時の合意内容を確認する資料となります。

ただし、記載内容が曖昧であったり、必要な事項が抜けていたりすると、将来のトラブルを十分に防げない可能性があります。

離婚協議書に法的効力はある?

離婚協議書は、公正証書ではないからといって、法的な効力がないわけではありません。

夫婦が合意した内容を記載し、双方が署名するなどして適切に作成された離婚協議書は、当事者間の合意を証明する重要な書面となります。

例えば、養育費の金額や支払期間について争いが生じた場合、離婚協議書は、どのような合意が成立していたかを示す証拠となり得ます。

もっとも、「法的な効力があること」と「支払いが滞った場合に直ちに差押えができること」は別の問題です。
従来は、離婚協議書のみでは、原則として直ちに強制執行を申し立てることはできませんでした。

2026年4月以降は一定の養育費について新たな制度が設けられましたが、離婚協議書に記載されたすべての取り決めが差押えの対象になるわけではありません。

離婚協議書のメリット

費用を抑えられる
離婚協議書は、自分たちで作成する場合、公証人手数料は必要ありません。
行政書士などの専門家へ作成を依頼する場合は報酬が必要ですが、公正証書を作成する場合と比較すると、費用を抑えられることがあります。

・比較的短期間で作成できる
夫婦間で離婚条件について合意できていれば、公証役場との打ち合わせや作成日の調整を行う必要はありません。
そのため、公正証書と比較して短期間で作成しやすい点もメリットです。

・合意内容を書面で確認できる
口約束だけでは、時間の経過とともに認識の違いが生じる可能性があります。
離婚条件を書面に残しておけば、離婚後も双方が合意内容を確認できます。

離婚協議書のデメリット

・差押えの対象となる金銭や範囲に制限がある


2026年4月以降は、一定の養育費について、離婚協議書などを利用して差押えを申し立てられる場合があります。
しかし、慰謝料や財産分与など、離婚協議書に記載されたすべての金銭債務が、新しい先取特権の対象になるわけではありません。
養育費以外の金銭債務について不払いに備える場合は、強制執行認諾条項を付した公正証書の作成を検討する必要があります。

・内容に不備が生じる可能性がある
インターネット上のひな形やテンプレートは、一般的な内容を想定して作成されています。
各家庭の事情に応じた取り決めが反映されていない場合や、金額、支払時期、支払方法などが曖昧な場合は、将来トラブルになる可能性があります。

離婚公正証書とは


離婚公正証書とは、夫婦が合意した離婚条件をもとに、公証人が作成する公文書です。

公証人は、裁判官や検察官などを長年務めた法律実務経験者などから任命されます。

離婚公正証書には、養育費、財産分与、慰謝料、面会交流など、離婚に伴う合意内容を記載できます。

一定の金銭債務について強制執行認諾条項を設けておけば、支払いが滞った場合、原則として改めて訴訟などを経ることなく、強制執行を申し立てることが可能です。

離婚公正証書のメリット

・支払いが滞った場合に強制執行を申し立てられる
公正証書の大きなメリットは、一定の金銭債務について強制執行認諾条項を設けることで、裁判などを経ずに強制執行を申し立てられる点です。
例えば、養育費の支払いが滞った場合、要件を満たしていれば、相手の給与や預貯金などの差押えを申し立てることができます。
ただし、公正証書があれば自動的に差押えが行われるわけではありません。
債権者自身が必要書類を準備し、裁判所へ強制執行を申し立てる必要があります。

・養育費以外の金銭債務にも備えられる
2026年の法改正による先取特権は、離婚協議書に記載された慰謝料や財産分与など、すべての金銭債務を対象とするものではありません。 
一方、強制執行認諾条項を付した公正証書であれば、養育費だけでなく、一定の慰謝料や財産分与などについても、強制執行を申し立てられる場合があります。

・高い証明力がある
公正証書は、公証人が当事者の本人確認や意思を確認したうえで作成します。
そのため、「合意していない」「署名した覚えがない」などの争いが生じにくく、高い証明力が認められます。

・原本が公証役場に保管される
公正証書の原本は、公証役場で原則として20年間保管されます。
手元の正本や謄本を紛失した場合も、公証役場に原本が保管されていれば、再交付を受けられる場合があります。

離婚公正証書のデメリット

・公証人手数料が必要
公正証書を作成する場合は、公証人手数料が必要です。
手数料は、養育費、慰謝料、財産分与などの金額をもとに算定されます。
また、正本・謄本の作成費用や送達に関する費用などが別途必要になる場合があります。
行政書士などの専門家へ原案作成や手続きの支援を依頼する場合は、別途報酬が必要です。

・作成に時間や手間がかかる
公正証書を作成するには、公証役場へ必要書類や原案を提出し、公証人による内容確認を受ける必要があります。
内容の修正や作成日の調整も必要になるため、離婚協議書より完成までに時間がかかる場合があります。

・原則として双方の協力が必要
公正証書は、一方の意思だけで作成することはできません。
夫婦双方が内容に合意し、原則として作成日に公証役場へ出向く必要があります。
代理人による作成が認められる場合もありますが、委任状などの必要書類を準備する必要があります。

2026年の法改正後は離婚協議書だけでも差押えできる?

2026年4月施行の法改正により、養育費の支払いを確保するため、養育費債権に先取特権が認められる制度が導入されました。

これまで、夫婦間で作成した離婚協議書に養育費の取り決めを記載していても、支払いが滞った場合、原則として離婚協議書だけを根拠に相手の給与や預貯金を差し押さえることはできませんでした。

差押えを行うためには、強制執行認諾条項を付した公正証書や調停調書、判決などの債務名義を取得する必要がありました。

しかし、2026年4月以降は、養育費の取り決めを証明する離婚協議書などがある場合、子ども1人につき月額8万円を上限として、先取特権に基づく差押えを申し立てられる場合があります。

ただし、離婚協議書があれば、自動的に差押えが行われるわけではありません。
実際に差押えを行う場合は、裁判所へ申立てを行い、養育費の取り決めや先取特権の存在を証明するために必要な文書を提出する必要があります。

また、この制度は、離婚協議書に記載されたすべての取り決めを対象とするものではありません。
慰謝料や財産分与などは、養育費とは異なり、この先取特権によって離婚協議書だけを根拠に差押えを申し立てることはできません。

そのため、法改正後も、公正証書を作成する意義がなくなったわけではありません。

2026年の法改正後も公正証書を作成する意味はある?

法改正により、一定の養育費については、公正証書がなくても差押えを申し立てられる可能性が生まれました。

そのため、
「離婚協議書でも差押えができるなら、公正証書は必要ないのでは?」
と疑問に思われる方もいるでしょう。
しかし、離婚協議書が公正証書と同じ効力を持つようになったわけではありません。

次のような場合は、法改正後も公正証書を作成する意義があります。
・養育費が子ども1人につき月額8万円を超える
・養育費の不払いに備え、強制執行の根拠をより明確にしておきたい
・慰謝料を分割で支払う
・財産分与の支払期限が将来に設定されている
・養育費以外の金銭債務についても不払いに備えたい
・合意内容を証明力の高い公文書として残したい
法改正により離婚協議書に記載された養育費の実効性は高まりましたが、公正証書の役割がなくなったわけではありません。

離婚協議書と公正証書はどちらを選ぶべき?

(離婚協議書を検討できるケース)
・夫婦間の合意内容を書面に残すことが主な目的
・将来にわたる金銭の支払いがない
・できる限り費用を抑えたい
・比較的早く書面を作成したい

(公正証書を検討したほうがよいケース)
・未成年の子どもがおり、養育費を取り決める
・養育費の支払いが長期間続く
・養育費が子ども1人につき月額8万円を超える
・慰謝料を分割で支払う
・財産分与の支払期限が将来になる
・相手が約束を守るか不安がある
・養育費以外の金銭債務についても不払いに備えたい
・証明力の高い公文書を残したい
どちらを選ぶべきかは、夫婦の状況や取り決める内容によって異なります。

単に「費用が安いから離婚協議書」「公正証書のほうが安心だから公正証書」と判断するのではなく、将来発生する支払いの内容や金額、支払期間、不払いのリスクなどを踏まえて検討することが重要です。

公正証書は離婚後でも作成できる?

公正証書は、離婚後でも作成できます。

ただし、公正証書は、一方の希望だけで作成することはできません。

離婚届を提出した後に相手の考えが変わり、公正証書の作成に協力してもらえなくなる可能性もあります。
そのため、公正証書を作成することについて合意している場合は、可能であれば離婚届を提出する前に作成しておくことをおすすめします。

離婚協議書や公正証書の作成を行政書士へ依頼するメリット

離婚協議書は、ご自身で作成することも可能です。
しかし、「書面を作成できること」と「将来も適切に機能する内容であること」は同じではありません。

離婚時に取り決める内容は、夫婦の状況によって異なります。
インターネット上のテンプレートを使用した場合、必要な事項が不足したり、支払条件が曖昧になったりする可能性もあります。

行政書士は、夫婦間で合意した内容を整理し、将来のトラブルを予防する観点から、離婚協議書や公正証書の原案を作成できます。

また、公正証書を作成する場合は、公証役場へ提出する原案の作成や、必要書類の案内、公証人との手続きのサポートを依頼することも可能です。

なお、行政書士は、夫婦間の交渉や紛争性のある案件における法律相談、相手方との代理交渉を行うことはできません。
当事者間で合意できていない事項がある場合や、相手との交渉が必要な場合は、弁護士への相談をご検討ください。

まとめ|将来の支払い内容を踏まえて適切な書面を選びましょう

離婚協議書と公正証書は、いずれも離婚時の合意内容を記録するための書面ですが、作成方法や証明力、不払いが生じた場合の対応などに違いがあります。

離婚協議書は、比較的費用を抑えて作成でき、夫婦間の合意内容を記録する方法として有効です。

2026年4月以降は、養育費の取り決めを証明する離婚協議書などがある場合、子ども1人につき月額8万円を上限として、先取特権に基づく差押えを申し立てられる場合があります。

もっとも、離婚協議書が公正証書と同じ効力を持つようになったわけではありません。
慰謝料や財産分与など、先取特権の対象とならない金銭債務について不払いに備える場合や、合意内容を証明力の高い公文書として残したい場合は、公正証書を作成する意義があります。

行政書士クレデンス事務所では、夫婦間で合意した内容に基づく離婚協議書の作成、公正証書の原案作成、公証役場との手続きのサポートを行っております。

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著者 行政書士 山脇 麻由奈
行政書士クレデンス事務所
兵庫県明石市

離婚協議書や公正証書原案の作成を中心に、離婚に関する書面作成を専門的にサポートしています。
単に書類を作成するだけではなく、将来のトラブル防止や「その後も機能する書面」であることを重視し、一人ひとりの事情に寄り添った丁寧な対応を心掛けています。
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