離婚時の財産分与とは?対象となる財産・割合・期限を行政書士が解説【2026年版】

離婚する際には、養育費や親権などとともに「財産分与」について決めておくことが重要です。
「夫名義の預貯金も財産分与の対象になる?」
「専業主婦でも2分の1を受け取れる?」
「結婚前から持っていた財産はどうなる?」
「離婚してからでも財産分与を請求できる?」
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
財産分与では、単純に現在持っている財産をすべて半分にするわけではありません。
原則として、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産が中心となります。
また、2026年4月1日に改正民法が施行され、財産分与に関するルールにも重要な変更がありました。
この記事では、離婚時の財産分与について、対象となる財産・対象にならない財産・分与割合・請求期限などを行政書士がわかりやすく解説します。
財産分与とは?
財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、もう一方に対して財産の分与を請求できる制度です。
財産分与には主に、
* 婚姻中に夫婦で形成した財産を公平に分ける
* 離婚後の生活を一定程度保障する
* 離婚原因に関する損害賠償的な要素を考慮する
といった性質があるとされています。
なかでも基本となるのが、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産の清算です。 そのため、「誰の名義になっているか」だけで財産分与の対象になるかどうかが決まるわけではありません。
財産分与の対象になる財産
財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して取得・維持した財産が主な対象となります。
例えば、次のような財産が考えられます。
☆預貯金
婚姻後の収入から形成された預貯金は、一方の配偶者名義の口座に入っている場合でも、財産分与の対象となることがあります。
例えば、夫が会社員として働き、妻が家事や育児を担当していたケースを考えてみましょう。
夫の給与から貯蓄した500万円が夫名義の銀行口座に入っていたとしても、「夫名義だからすべて夫の財産」となるとは限りません。
妻が家事・育児などを担うことで夫婦の財産形成を支えていたのであれば、実質的に夫婦の協力によって形成された財産と考えられるためです。
☆不動産
婚姻中に夫婦の収入などをもとに購入した自宅や土地も、財産分与の対象となることがあります。
ここでも、登記上の名義だけで判断されるわけではありません。
例えば夫単独名義の住宅であっても、婚姻中に夫婦の協力によって取得・維持してきたものであれば、財産分与の対象となる可能性があります。
☆株式・投資信託など
婚姻中の収入を原資として購入した株式や投資信託などの金融資産も、財産分与の対象となることがあります。
NISA口座など一方の名義で管理されている資産についても、名義だけで対象外になるわけではありません。
☆生命保険など
婚姻中に加入し、保険料を夫婦の収入から支払ってきた生命保険などについては、解約返戻金が財産分与の対象として問題になることがあります。
☆自動車
婚姻中に夫婦の収入などで購入した自動車についても、財産分与の対象となることがあります。
財産分与の対象にならない財産とは?
一方で、夫婦が持っている財産がすべて財産分与の対象になるわけではありません。
一般に、夫婦の協力によって形成されたものではない財産については、財産分与の対象から外れることがあります。
このような財産は「特有財産」と呼ばれます。
代表的なものとして、
* 結婚前から所有していた預貯金
* 結婚前に購入した財産
* 婚姻中に相続によって取得した財産
* 親などから個人的に贈与された財産
などがあります。
例えば、結婚前から夫が300万円の預金を持っていた場合、その300万円は原則として夫自身の財産として扱われます。
また、婚姻中に妻が自分の親から不動産を相続した場合も、夫婦が協力して取得した財産ではないため、原則として妻の特有財産と考えられます。
ただし、婚姻前からの財産と婚姻後に形成した財産が同じ口座で混在している場合などは、どこまでが特有財産なのか判断が難しくなることがあります。 そのため、通帳や取引履歴など、財産の形成過程が確認できる資料を保管しておくことも重要です。
財産分与は原則2分の1?
財産分与について、
「夫の方が収入が多かったから、夫が多く受け取るのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、収入額だけで夫婦の貢献度が決まるわけではありません。
2026年4月1日に施行された改正法では、婚姻中の財産の取得または維持について、夫婦それぞれの寄与の程度が異なることが明らかでない場合には、その寄与の程度は相等しいものとするという考え方が明確化されています。
そのため、例えば一方が会社員として収入を得て、もう一方が専業主婦・専業主夫として家事や育児を担っていた場合でも、単純に「収入を得ていた側の貢献度が高い」と判断されるわけではありません。
実際に家庭裁判所でも、共働きの場合だけでなく、一方が専業主婦・専業主夫である場合についても、夫婦の財産を2分の1ずつに分けるよう命じられるケースが多いとされています。
もっとも、財産分与は必ず機械的に2分の1になるわけではありません。
個別の事情によっては異なる割合となる可能性があります。
2026年4月から財産分与の請求期間が5年に
2026年の法改正で特に注意したいのが、財産分与の期間制限です。
→2026年4月1日以降に離婚した場合
原則として、離婚から5年以内であれば、財産分与について家庭裁判所に申立てをすることができます。
→2026年3月31日以前に離婚した場合
従来のルールが適用され、原則として離婚から2年以内です。
つまり、
「法改正されたから、過去に離婚した人も一律5年になった」というわけではありません。
ここは特に注意が必要です。
財産分与は離婚前に決めた方がよい?
法律上は、離婚後に財産分与を決めることもできます。
しかし、可能であれば、離婚届を提出する前に財産分与について話し合っておくことをおすすめします。
離婚後になると、
「相手と連絡が取りづらくなった」
「預金口座の状況がわからない」
「財産について話し合おうとしても応じてもらえない」
といった問題が生じることも考えられるためです。
離婚前に、
1. 夫婦にどのような財産があるのか確認する
2. 財産分与の対象になるもの・ならないものを整理する
3. 誰がどの財産を取得するのか決める
4. 支払いがある場合は金額・期限・方法を決める
5. 合意した内容を書面に残す
という流れで整理しておくとよいでしょう。
財産分与を離婚協議書に記載するときのポイント
財産分与について夫婦間で合意した場合は、口約束だけで終わらせず、離婚協議書などの書面に残しておくことが重要です。
例えば金銭を支払うのであれば、
「財産分与として150万円を支払う」
だけではなく、
* 誰が誰に支払うのか
* 金額
* 支払期限
* 一括払いか分割払いか
* 振込先
* 振込手数料を誰が負担するか
などを具体的に定めておくことが考えられます。 不動産や自動車などを分与する場合には、所有権移転や名義変更などについても検討する必要があります。
財産分与は公正証書にした方がいい?
財産分与として金銭を支払う約束をする場合には、公正証書の作成を検討する方法もあります。
特に、
* 財産分与を分割払いにする
* 支払額が大きい
* 支払いが長期間にわたる
* 将来の不払いが心配
といった場合には、公正証書を作成するメリットが大きくなることがあります。
金銭の支払いについて、一定の要件を満たした強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、相手が約束どおり支払わなかった場合に、原則として改めて訴訟等で債務名義を取得することなく強制執行を申し立てることができます。
一方、財産分与を離婚時に一括で支払い、すでに履行が完了しているような場合には、必ずしもすべてのケースで公正証書が必要とは限りません。 状況に応じて、離婚協議書と公正証書のどちらが適しているのか検討するとよいでしょう。
財産分与について話し合いがまとまらない場合
夫婦間で財産分与について合意できない場合や、そもそも話し合うことが難しい場合には、家庭裁判所の手続を利用する方法があります。
離婚前であれば、離婚調停の中で財産分与について話し合うことができます。
離婚後に財産分与について話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てることができます。
調停では、財産分与の対象となる財産や夫婦それぞれの事情を確認し、必要な資料を提出するなどして合意を目指します。
当事者間ですでに合意ができており、その内容を書面化したい場合と、財産の範囲や金額などについて争いがある場合とでは、必要となる対応が異なります。 争いが生じている場合には、弁護士への相談を検討することになります。
財産分与と年金分割は別の制度
財産分与と混同されやすいものとして「年金分割」があります。
年金分割は、離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。
財産分与とは別の制度であるため、財産分与について合意しただけで、自動的に年金分割の手続まで完了するわけではありません。 年金分割を希望する場合には、別途、年金事務所などで所定の手続を行う必要があります。
財産分与は離婚前に整理して書面に残しておくことが大切
離婚時の財産分与では、夫婦のどちらの名義になっているかだけではなく、婚姻中に夫婦が協力して形成・維持した財産かどうかが重要になります。
婚姻中に形成された預貯金、不動産、株式・投資信託、保険、自動車などは財産分与の対象となる可能性があります。
一方、婚姻前から所有していた財産や、相続・個人的な贈与によって取得した財産などは、原則として財産分与の対象外となります。
また、2026年4月1日施行の改正法により、同日以降に離婚した場合、財産分与について家庭裁判所に申立てができる期間は原則として離婚から5年となりました。
離婚後でも財産分与について話し合うことはできますが、後日の認識の違いやトラブルを防ぐためにも、できる限り離婚前に財産を整理し、合意した内容を書面に残しておくことが重要です。
行政書士は、夫婦間ですでに合意している財産分与の内容を整理し、離婚協議書や公正証書の原案として書面化するサポートを行うことができます。 一方で、財産分与の金額や対象財産などについて夫婦間に争いがあり、相手方との交渉や法的紛争への対応が必要な場合には、弁護士への相談をご検討ください。
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